ある時代、ある場所。
度重なる戦争で人々の心は荒み、貧困にあえいでいた。
貧困から抜け出す術はただ一つ。
――騎士になること。
貧しい生活からの脱出を夢見て、若者は闘技場へと向かう。
騎士になる事がどういう事かも知らされず。
今日も、試合を告げる鐘が鳴る――
そんな時代、そんな世界で彼らは出会った。
「美咲ちゃんっていうんだ。かわいいねー」
「なんだ、お前は!ついてくるなこの変態!!」
母親の病気を治すため、少女は騎士を目指す。
何も知らずに。
「騎士なんてやめときなよー。それより俺のお嫁さんになってv」
「ふざけるな。私はどうしても騎士にならなきゃいけないんだ!」
全てを知る少年は、光を見つけた。
闇しかなかった自分自身を照らす、暖かな光を。
「お前、騎士は目指さないのか?お前くらいの力なら、簡単に騎士になれるだろ」
「やだなぁ、美咲ちゃん。強い俺に惚れ直しちゃった?」
「誰もそんな事は言ってない!!」
「騎士なんてつまんないからやんないよー。美咲ちゃんもやめときなって」
守るために、できる事は限られている。
「黒い月」に知られてしまっては、全てが無に帰してしまう。
「すまん、私は・・・結局お前に頼ってばっかりだ」
「大丈夫。俺には鮎沢くらいがちょうどいいんだよ」
「どういう意味だよ!?お前はまたふざけやがって・・・」
タイムリミットは、もうすぐそこに。
「う・・・すい・・・?」
「ふざけてる訳じゃない。好きだよ、鮎沢」
「・・・・」
「嫌なら押し退けていいよ。逆らわないから」
「・・・嫌じゃ、ない・・・」
心を通わせた彼らに、容赦なく運命が襲いかかる。
彼らは繋いだ手を離さずにいられるのか?
「碓氷!なんでお前がここに・・・!」
「柄にもなく色々と頑張ってはみたんだけど、無理だったんだ。ごめん・・・鮎沢」
「なんで謝るんだよ!無理って何なんだよ!!」
「運命の事だよ。無理だったから・・・その剣で、俺の心臓を貫いて。そうすれば鮎沢の願いは叶う」
「できるわけないだろ!?どうして・・・信じてたのに!!」
「できるよ、大丈夫。さあ、剣を持って」
何を信じ、何を諦めるのか?
「無理だ!私はお前を・・・」
「それ以上は言わないで。お母さんが大切でしょ?だったら鮎沢の取る道は一つだ。」
「大丈夫、俺は鮎沢に会うことができて幸せだったんだ。・・・鮎沢に殺されるなら本望だよ」
「うすい・・・っ」
「他の奴に命を渡すのは我慢できない。だから、せめて鮎沢の手で俺の命を摘み取って?」
すべてを受け入れた少年。
少女はそれを拒絶する。
「さあ、鮎沢。もう時間はないよ。・・・早く」
少年の覚悟は少女を救うのか?
少女の慟哭は、世界に届くのか?
――全ての真実は、黒い月だけが知っている――
【アトガキ】
ゲームの宣伝風です。ちなみに続きを書く予定は今のところ皆無です。
書いててものすごく楽しかったです。(ごめんなさい・・・)
反省はしました。でも後悔はしてません。